3つの自立を育み10代の子を安心して育てていくために

1 10代特有の子育ての難しさ

「10代の子って、何を考えてるか分からない。」
「10代は気分が変わりやすく情緒が不安定で付き合い方が難しい」

”10代は疾風怒濤の時代”。小学校の高学年から中学・高校などの(中学を出て社会に出る場合もありますが)この時期は子ども達にとっては思春期の真っ只中で、とてもキラキラした青春の時代でもあり、
心身の発達のバランスや周囲との関係づくりの中で
大変な思いをする時期でもあります。

そんな10代の子ども達の成長を家庭で見守り、
ある時は真剣に向き合いある時は一緒に涙を流し、
育てていくのは本当に大変な事だと思います。

特にコロナ禍でニューノーマルが求められ、
社会が激変していく中での10代の子育ては
「これまでの常識が通じない」
「先の見通しが立ちにくい」
「こうすれば大丈夫という正解がない」
「親世代自身も働き方や生き方の見直しを迫られる」
など社会の中で背景も価値観も変わっていく中での
子育てとなり迷いや不安も大きいのではないかと思います。

今の10代の子ども達は、これまでの10代と同じように自分で自分の気持ちや体の変化を持て余す事に加え、コロナ禍で学校を含めた生活様式ががらっと変化し、テクノロジーの発達などで従来にはなかったスタイルが暮らしの中に入って来ると“選択肢”が驚く程広がり、いろいろな決断を迫られる事も増えるのだろうと思います。

それは元々変化を苦手とする性質を持つと言われる”人間”にとっては、ものすごくストレスがたまる事を意味します。

10代の子が抱えるストレスを従来のように部活などの放課後に熱中できるような活動で発散できるかというと、それも今は難しいのが現状です。

友人関係の中で解消できるかというとそれも外出などに制限が多い今は難しいのだろうと思います。

逆に家庭で過ごす時間が長くなると今までよりも親子の時間が長くなり、今までならお互いに忙しくて見なくても済んだ所が見えてしまう。

その事で子どもの生活に「口出し」してしまう事もあるだろうし、子どもの態度に平常心を保てない事もあるかもしれない。その結果、親子関係が険悪になってしまう事も考えられます。

時代背景が10代特有の子育ての大変さをさらに難しいものにしている今、自分でも一男一女を育て、学校の家庭科の授業や実習で多くの中高生と関わって来た自分に何か出来る事はないかと考えるようになりました。

特に2021年3月に学校を退職した後、子育てにメインで関わるママを対象にした子育てサポート活動をして来ました。

その後マイクロスクールという新しい形式の学校にインターンとして関わり、時代の変化を肌で感じるようになり“子育て支援”への考え方が変わって来ました。

今は子育て中の親御さんが少しでも安心して10代の子ども達と家庭で向き合えるよう子育ての情報やヒント、自分の経験を中心にSNSで発信しています。

今回は、その一環として家庭科の経験をベースにした
「3つの自立」についてまとめる事にしました。
お役に立てば幸いです。

2 家庭や学校で見て来た10代の子ども達

「お母さんって、普段はつまらない小言ばっかり言ってたくせに、肝心の時になると何も言ってくれなかったよね…。」
社会に出て1人暮らしをしながら仕事をするようになった息子から言われる言葉です。

“ちゃんと躾をしなければ!”
“いい学校に入れて将来困らないようにしなければ!”
長男の息子の子育て中は婚家からのプレッシャーや
家庭科の教師としてのプライドから、型にはめようとばかりしていました。

息子は集団主義に馴染みにくい個性を持った子だったのに私は自分の考えを押し付けて彼を苦しめてしまいました。その辺りの事はよろしければ下の記事をお読み下さい。

https://note.com/32style_shift/n/n302929671e20

10代の子は宇宙人。何を考えているか、次にどう行動するか? 本当はどうしたいのか?これから、どうしようと考えているのか?

コミュニケーションがとりづらく、子どもの表情や態度を見ながら声をかけたりするタイミングを見計らう事が必要でした。

この状況はスマホが普及してからはもっと深刻になった気がします。

「私が自殺を思い止まって今生きてるのは、小6の時、ネットの掲示板で知らない人に人生相談をして“生きる”意味を一緒に考えてもらったから」これは当時中高一貫校に通っていた娘から、友人関係の事などで荒れた日々を送っていた中3の頃に聞いた言葉です。

子ども達が10代になり成長していく時期は、親の人生にもいろいろな事が降りかかって来ます。我が家も会社員だった夫の早期退職の騒動やトラブルなど娘が悩んでいた時期と家庭が落ち着かない時期が重なっていました。

そのため娘の悩みに気づかず学校で指導を受け退学を考えるような状況になった事もありました。

今振り返ると親の都合は言い訳でしかなく、もっと子ども達が安心して過ごせる家庭環境をつくるようにすれば良かったと心から後悔しています。

この時期の家庭の不安定さは、たとえ無理して進学させても、その後の社会に出る時・就職や転職の時に大きく影響すると痛感したからです。

家庭と並行して20年以上公立や私学の中学高校で10代の子ども達と家庭科の授業や実習を通して向き合って来た私は学校でもいろいろな10代の子達の様子や心模様を垣間見る機会がありました。

家庭科は暮らしや家庭と密接に関わる科目だけに様々な課題や授業中の生徒達の発言、言葉、実習中の態度やしぐさからいろいろな事が分かりました。

そこで見てきた10代の子ども達は大人びて見えても、中身は幼く大人のサポートが必要だと感じる時が多かった事を思い出します。

では家庭で親や他の家族に無条件に頼れるかというと10代特有のプライドやタイミングのズレ、親自身の多忙やストレスなど、子どもからのヘルプと親や家族のサポートは噛み合わない時が多いようでした。

今思い返しても、10代の子達の心が開かれるチャンスは本当に少なく、その“一瞬”とも言えるチャンスを逃すと「この人は頼れない」とバタンと扉を閉められてしまうような所がありました。

「後でね」「ちょっと待ってね」が言葉では通じてもヘルプを求めてくる気持ちを萎えさせ信頼を失う事につながる事もありました。

自分の事は自分で出来るようになり、すぐに社会に羽ばたいていく事を前提に子ども達自身の人格や個性を大切に自立を促していくのは至難の技のように思います。

でも、それまで関わって来たいろいろな子ども達の社会に出てからの事を見聞きするたびに思うのです。10代の子育てで、その後の人生は子どもも親も大きく変わると。

そして、その変わってしまう分岐点になるのが、どれだけ子どもを信頼し子どもも親も安心出来る状況の中で子ども達が成長出来るかだと。

では「そのために出来る事は何だろう?」そう考えた時、家庭科の時間に出会ってきた子達の中で「この子はすごいな」「自分の人生をしっかり生きてる」「どうしたら、こんなしっかりした子に育つのだろう」と感じた子達の顔が浮かんで来たのです。

その子達は皆、実習の時も率先して動く事が出来、生活に関する知識も豊富で、家庭で自立に向けての躾というか教育のようなものがしっかりされている子ばかりでした。

逆に自分の子達を考えると家庭科の教師でありながらお恥ずかしいのですが「家の事なんかするより、今は受験勉強して❗️」と子ども達を追い立てていました。

大学は自宅から通わせるつもりだったので、自立に関しては進学してからも何とかなると思っていたからです。その後の子ども達の大学生活がどれだけ多忙になるかもしらず…。結局、子ども達は身の回りの事を自分で出来るレベルになる前に家を出て行き、仕事をしながらの1人暮らしで苦労させてしまう事になりました。

ここでは、一部ですが公私を含めて見て来た10代の子ども達の姿についてまとめてみましたが、では「10代の子ども達を安心して社会に送り出すために子育てを通して出来る事は具体的にどんな事なのでしょうか?」

3 10代に必要な3つの自立

「卒業して本当に一人暮らしなんて出来るか不安しかない」「ちゃんと社会に出て仕事について生きていけるのか心配だ」学校で子ども達と接していると、こんな声が聞こえてくる事がありました。特に家計分野や人生設計などについての授業や実習をしている時や、その後にです。中学や高校の家庭科と言えば”料理・裁縫”のイメージを持っている人が多いのですが扱う内容は大きく変わって来ています。衣食住の生活分野は当然ありますが、それに加え暮らしに関わるお金の事を扱うパーソナルファイナンス、低年齢化して頻発している消費者トラブルに対応できる力をつける消費者分野、SDGs関連を扱う環境分野に子どもの成長や発達、家族関係などを扱う分野、高校では高齢者分野なども入って来ます。(他にありますが、ここでは割愛します。)

それらは全て生徒達の将来の自立のために知識や技術を身に付け、自分らしい生き方やライフスタイルを選んでいけるようにするためのものです。そう自立。これが生きていくために不可欠な能力と知識となります。では「どんな自立があるのでしょう?」高校の家庭科では基本は次の4つです。”生活面での自立” ”経済的自立” ”精神的自立” ”関係的(社会的)自立”。この中でご家庭で育んでいければ安心して10代の子の子育てが出来ると思うは”生活面での自立” ”経済的自立” ”精神的自立”の3つです。”関係(社会)的自立”は学校生活や地域での交流など個々の子ども達の活動内容でかなり変わってくるので、ここでは3つの自立に絞って簡単にまとめさせてもらいます。

① 経済的自立と人生100年時代

キャッシュレス化が進み、オンライン決済が普及し、現金を持たない生活が広がっている現代、子ども達にとってお金は数字となり現実味を持たないものになって来ているのかもしれません。

でも社会に出たら自分でお金を稼ぎ”生きていかなければならない事”はよく分かっていて不安を感じている子が多いように思います。

10代の子ども達が少しでも経済的自立の意識を持つように家庭でお金の話をする事はとても大切な事だと私は思っているのですが学校の授業で生徒達に聞くと家族とお金の話をする事はあまりないようでした。

具体的にどんな話をするかというと難しいかもしれませんが、授業で生徒達に伝えていたのは「自分名義の金融機関の口座があるかどうかは知っておいた方がいい」という事でした。これは自然災害や親が事故に遭った時などの対処にも役立ちます。ただプライベートな事なので家庭の方針を大切にという事も伝えていました。生徒達が実際にどうしたかは分かりません。

同じお金の話でも私が後悔しているのは「うちにはお金がない」と子ども達によく言っていた事です。うちは子ども達が2人とも中学受験をして私立の中高一貫校に入学したため、ちょうど10代に入った小学生の頃からとんでもない額の教育費が必要になりました。大学だけは自宅から通える国立大学に入って欲しいとの思いから「お金のかからない国立に入学して!」と言い続けたのです。

これは子どもに不安を植え付ける事でしかなく、結局2人とも条件通りの大学に進学したものの“お金への不安”から無理なバイトを入れたり好きな事に没頭出来なかったりなど希望に満ち溢れた大学生活とは程遠く、その後の就職にも暗い影を落としてしまいました。もっと子ども達を大人として扱い家計の現状などを正しく知ってもらえば良かったと反省しました。

お金については各家庭でそれぞれの考え方があるかと思いますが、子ども達はよく親を見ていてお金の出入りについても敏感だというのが私の印象です。どこまで家計の事について話をするかの判断は難しいかと思いますが、ある程度の事は10代の子に伝えるといいのではないかと思います。

人生100年時代は親世代も初めて迎える時代で子ども世代のモデルにはなりません。子ども達の将来の職業や生き方を心配するのと同様に自分達自身の今後の生き方や仕事のスタイルを考える必要があります。さらに今は年金の支給年齢は65歳ですが、今後延長され70歳か下手すると75歳頃まで現役で働く必要が出て来るかもしれません。その年齢までの収入の確保が必要になる可能性があるという事です。

それも踏まえた上で子ども達に経済的自立に向けての意識づけをしていく事で“子ども達の将来への不安”は少しでも解消され安心して子育てが出来るかと思います。

② 精神的自立と「個の時代」

「食卓の団らん」この言葉が過去のものになったかのように、今、家族が共に過ごす時間の光景は変わって来ているようです。家族がそれぞれスマホやタブレットなどに目を落として自分が好きな画面を見つめながら、リビングなど一緒の場所にだけはいる状況が多く見られるようになったと聞きます。

その画面の先に広がる内容もバラバラ。ゲームであったり、好きな動画であったり、或いはニュースやラインのやり取り、それぞれの世界に没頭するのも普通の家庭で見られるシーンなのかもしれません。

家族が個の時間を過ごすようになった「個の時代」でも家族という単位は子どものとってはとても大切で大きな影響を受ける関係です。特に精神面で。

10代は自分の将来についてのいろいろな決断が必要になる時期です。その時、親がその決断にどう関わるか、どこまで子ども達の考えや意見を丁寧に引き出せるかは子ども達の”精神的自立”に大きく影響していきます。普段から精神的自立について考慮しながら10代の子と向き合う事で親子の信頼関係はしっかりと築かれて安心して子育てが出来るようになります。

③ 生活面での自立と生き方

「料理も出来ないのに一人で暮らせるかな」高校で調理実習をすると女子高でさえ生徒達から聞こえてくる言葉です。

生活面で自分でいろいろな事が出来るようになって置く事は子どもに自信と安心を与えてくれます。そして将来への不安が少しでも解消するのではないかと思うのです。洗濯はコインランドリーがあり、掃除は頻繁にしなくても命に関わるほど深刻な事にはなりません。でも料理は別です。「自分で食べて行ける力をつける」というのは、文字通り食材があれば自分で料理をして生きて行けるという安心感につながるからです。

今の時代、コンビニに行けばお金さえあれば食べ物は何でも手に入り”料理は時間と手間がかかり面倒”というイメージが先行している中で生活経験が少ない子ども達に家庭で料理するように持っていくのは難しいかもしれません。

ただ料理自体を経験させようとしなくても意識づけは出来るはず。栄養バランスを含めた食事の管理などについてです。10代の間に食の意識を高めておくことで社会に出した後の健康リスクは激減し心配が減り、安心子育てにつながると思います。

4 安心して10代の子と向き合うために

長い文章をお読みいただきありがとうございました。3つの自立が10代の子の安心子育てとどうつながるか、少しでもお伝えする事が出来たならうれしく思います。

ここに書いている事は理想、きれい事なのかもしれませんが、これからの時代を生きる子ども達には必要な事だと思っています。ただ、それでなくても難しい10代との関係の中で骨が折れる事だろうと思います。

そこで10代の子の子育てを少しでも安心して出来るよう、今後はより具体的にSNSを通して情報やヒントをお届け出来ればと思います。

動画や音声配信などは更新を止めて新たな内容の配信のため準備中ですが、その他の活動の詳細につきましては下記のサイトからご覧いただけます。よろしければご覧ください。〈終わり〉

https://peraichi.com/landing_pages/view/ftiit

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