これからの子育てのヒント:授業やセミナーから考えてみた事〈家庭科〉

1 危惧していた未成年の妊娠相談急増
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「やっぱり…」
ステイホーム期間中に
一番心配していた事が
現実となりました。
未成年の妊娠相談の
急増のニュースを
目にした時、
小学生からの相談もあったと知り、
心が重くなりました。

「赤ちゃんが出来たの!」
「おめでとう!」
本当なら
祝福に包まれる命の誕生を
戸惑いながら不安な気持ちで
受け止めなければならない子達の
心の内側を考えると
いたたまれなくなります。

昔は
家庭科は女子だけ受けていて
高校の普通科でも
保育分野に
十分な時間をかける事が
出来ました。

妊娠や出産、避妊や
親としての役割、
子供の育て方など
実習なども交えながら
授業を進めたものでした。

今は家庭科の時間は短くなり
特に妊娠の仕組みや
出産については
あまり時間をかけられないのが
現状です。

さらに
共学で男女が共に受ける授業での
扱いにくさもあるかもしれません。
そういう背景の中で
保健などで性については
学校で学ぶ機会もあるとは
思いますが
なかなか真剣には向き合えず
ネットの都合のいい情報だけを
信じる可能性も
大きいのではないかと思います。

「自分だけは妊娠なんてしない」
「自分は妊娠なんてさせない」
「きっと大丈夫…。」
根拠のない自信です。
特に未成年の10代での性交は
相手に避妊の話をするなんて
出来るはずもなく
流されてしまうのだろうと
思います。

「では、
どうすればいいのだろう?」
時代の変化とともに
保育分野の伝え方も
変えていく必要があるとは思うけど
「どう変えていけばいいのだろう?」
この事について過去の実践や
受講したセミナーなどから
ヒントを得てまとめてみました。

2 10代ではイメージしにくい親となる未来
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女性の学歴が高くなり
学校を卒業後に仕事に就く事が
当たり前の社会になると
女の子でも受験勉強が優先され
近所の子と遊んだり
小さな子供の面倒を見たりする
時間がとれにくくなります。

さらに少子化が進み
近くに親戚がいて
小さな子供がいて
よく行き来しているなどの
条件が揃わないと
自分が出産するまで
赤ちゃんに触れた事がない
という女性も
いるだろうと思います。

今は”産まない選択”が出来る
時代です。
女性が自分のキャリアアップに
価値を置き
出産や子育ては
その後と考えても
不思議ではありません。

さらに人によっては
「子供だけが欲しい」
という人もいます。

女は25歳までに結婚しないと
行き遅れで売れ残り。
”25日のクリスマスケーキ”と
言われた時代は
ある意味、
社会の中で
決められた年齢制限に
従えば良かったので
人生設計も立てやすかった
のかもしれません。

でも今は違います。
個人の自由。
「結婚も出産も子育ても
してもいいし、
しなくてもいい。」
そんな時代に生きる子達が
親となる未来をどれだけ
真剣にイメージ出来るでしょうか?

さらに世間では
”ワンオペ育児”や
”ママ友地獄”などの
子育ての大変さを強調する
情報も飛び交っています。

こういう社会背景もふまえ
実験的ではありましたが
数年前に
女学院で高3学年を
受け持った時に
3学期に見せた録画番組は
彼女達にとって
母となる自分について
考えるきっかけとなった
ようでした。

3 ”ママたちが非常事態”
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2016年に放送された番組は
タイトルが
”ママ達が非常事態”
「最新科学で迫る
~ニッポンの子育て~」という
ものでした。

高3の生徒達にとっては
受験勉強のラストスパートの
1月に受ける家庭科の授業です。

”何か彼女達の将来に役に立つ
メッセージを伝えたい”
その想いで子育てをテーマにして
私の体験を語り
この番組を視聴してもらいました。

なぜ
母親達はこんなにも子育てに
不安を感じるのか?
どうして子育てでイライラして
しまうのか?

この番組の中で描き出される
母親の孤独や不安の叫びと
実態は当時の日本の子育ての
現状そのものでした。

”最新科学で迫る”アプローチは
とても興味深いものです。

女性ホルモン「エストロゲン」
による
脳の神経細胞の働き方の変化と
孤独や不安などの気持ちの関係。

人類の進化の過程で
確立して「共同養育」への
欲求が核家族化の進行などで
満たされにくい現状と
孤立した育児で感じるつらさ。

さらに母親を悩ませる
”夜泣き”や”イヤイヤ行動”と
子供の脳の発達の関係。

途中で出て来た
女子大生が赤ちゃんと
関わる事で
ホルモンの分泌が増え
子供への愛情が高まるシーンでは
自分達のすぐ近い将来と
重なったのか
番組を見入ってくれた生徒も
いました。
(これはNHKのオンデマンド配信でも
 視聴可能なようです。)

4 共に育てる環境の大切さ
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では、
このウィズコロナの時代の
子育てはどうなるのだろう?

「SDGs・レジリエンス
~ウィズコロナ社会に私たちが
今なすべきこと~」
で伺ったお話から
いろいろなヒントをいただきました。

基調講演では
人とチンパンジーの
赤ちゃんの比較がなされ
人間特有の赤ちゃんの特徴が
あげられていました。

・大きく生まれる
・離乳食が必要である
・人見知り期がある
・保育が長期間に渡る
・思春期スパートがある

私の解釈も入るので
正確ではないかもしれませんが
こういう事かと思います。

人間の赤ちゃんは
他の動物と比べて
体脂肪も厚く
大きくは生まれてくるけれど
離乳食などの手間がかかり
親から自立するまでの
期間が長い。
その子育て期間の中で
体と脳の発達のバランスなどの
問題で
思春期特有の接し方の
難しい時期がある。

だから
親だけで子育てをしようとせず
オープンな家族で
いろいろな人が関われる
ようにしていく事が大切という
事だったように思います。

ただ実際には
いろいろな人に子育てに
関わってもらう事は
親がいない場での虐待などの
リスクも伴い
慎重さが大切かとは思います。

5 これからの時代の子育てのヒント
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さらにフォーラムでは
今の社会全体についての
お話もありました。

今の時代の特徴として
お話いただいた中から
子育てに関係しそうだと
思ったものを
ピックアップすると
次のようになります。
・不安の時代
・フラットで均一
・個人がコミュニティと切り離される
・社会とのつながりが感じにくい

こういう社会では
「自己肯定感」や
「自己実現感」が
感じられにくくなるという事
でした。

ではどうすればいいのか?

伺ったお話を子育てと
関連させて
私の見解も入れて
まとまると
次のようになります。

「どのコミュニティで子育てを
するか?」
生活環境を見直して
選んだ場所の風土に合った
生活の中で子育てをしていく。

「どうコミュニケーションを
とっていくか?」
開かれたオープンな家族へ
シフトしていき
信頼できる人達に
育児に関わってもらう。
また、周囲の人も
そういう意識を持つ。

「どんな価値観の中で
子育てをするか?」
お金の回し方や
環境への配慮、
人との交流など
豊かさをどうとらえるかを
考えて子育てをする。

6 学校で感じた事とまとめ
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今、
中学と高校で
家庭科を受けもたせてもらい
痛感する事は
子供達の生活体験や
人と交流する多様な経験の
少なさです。

様々な事を五感で感じ
それを体感し
自分の中に落とし込む事は
他の人の事を考え
気持ちを推察する時などに
とても役に立つと思うのですが、
今の子供達は
習い事や
塾に追われる日々だと
なかなか難しいようです。

さらに
小さい子供達と
触れ合う機会や
赤ちゃんに接する機会の
乏しさに加え
妊婦さんや赤ちゃん連れの人は
公共の場に居ても
スマホに目を落としていて
目に入りにくいようです。

コロナ禍で
それらの事がますます
難しくなっている状況ですが
折に触れて
いろいろな体験が出来る
機会が増えてくれればと
心から願います。

非常勤講師をしている
勤め先では
”赤ちゃん”に
先生になってもらい
ママと一緒に
学校に来ていただき
生徒達と触れ合う時間を
もうけています。

その時
ご参加いただいたママ達から
育児のお話を
聞かせていただきます。

その実習の中で
何を感じ取るかは
それぞれの感性によりますが
子供達にとって
忘れがたい時間になる事は
間違いありません。

「静かな年末年始を
過ごしましょう」と
言われている今年。

これまで
時間に追われ
走り続けて来た生活を
見直し
これからの子育てを
どうするか考えている
親御さんもいらっしゃると
思います。

これから結婚や子育てを
考えている方も
未来の見通しが
立ちにくい現状では
家庭を持つという
新しいライフステージに
進む事に
躊躇しているかもしれません。

それでも
時間は確実に進み
今年は終わろうとしています。

だとしたら
新しい時代に合った
自分らしい子育てを
考えるいい機会と
とらえてみませんか?

どんな形で
関われるかは
分かりませんが
私自身も一緒に
未来を担う
子供達を育てて行く
お手伝いが少しでも
出来れば幸いです。
〈終わり〉

追記
文中に出て来たセミナーは下記の
ものです。
YouTubeでの配信も後日
公開されるようなので
興味のある方はご覧下さいね。

「令和2年度SDGs・レジリエンス
 フォーラム」
~ウィズコロナ社会に私たちが
 今なすべきうこと~

#子育て
#妊娠出産
#ウィズコロナ
#家庭科

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