今、時代は「家庭を築く」時代から
「個」の時代に変化しています。
その時代の変化に合わせて
社会を生きるために学校で
暮らし方や生き方について学ぶ
家庭科も変化していく時期が
来ているのかもしれません。
2年前に家庭科の教師を退職した現在
学校で「家庭科」を
担当していた時には見えなかった
社会の急激な変化や
学校という閉じた社会では
知り得なかった
学校以外の場で生きる方々の
働き方や生き方の現状を知るにつれ
時代のニーズに合った
「これからの家庭科」は
どうなるのだろうと
考えるようになりました。
そこで在職中に扱っていた
家庭科の内容をベースに
時代のニーズに合わせた
家庭科のアイデアを
「ライフマネジメント」として
まとめてみました。
アイデアの内容は箇条書きに
授業や実習のアイデアは
動画などを紹介させていただき
最後に参考書籍をまとめさせて
いただきました。
ライフデザインの内容を
図にしてみたものがこちらです。
ここにまとめた内容は
退職した翌年から学校指導要領も変わり
コロナで学校での教育活動の変化もあり
的外れな所が多々あるかと思いますが
これからの家庭科を考えていく上で
何かの参考にしていただければ幸いです。
コンテンツのアイデア
ライフマネジメントで扱う内容としては
下記のようなコンテンツを考えてみました。
Ⅰ ライフデザイン
【パーソナルファイナンス】
1.家計の収支管理
収入と支出
(消費支出:生活関連支出と非消費支出)
可処分所得(手取りと額面)
ライフイベント表、
キャッシュフロー表の作成
※P/L(損益計算書)と
B/S(貸借対照表)の知識
2.資産商品の選択
家計のバランスシート、金融商品の選び方、
資産運用の基礎知識(マネーリテラシー)、
ローンやクレジットとの付き合い方
決済方法の知識と選択
経済圏の知識と選択
【キャリアデザイン】
〈経済的自立〉
1.職業選択
・雇用環境と社会
・ワークライフバランス
※家事労働の考え方
2.就業/起業に向けての準備や投資計画
3.収入手段についてのデザイン
- ファミリープラン
- 家族計画(家庭作りを望む場合)
- 1人暮らしのプランニング(独身で過ごす場合)
- 家族・家庭
※結婚の現状、家庭の機能、法律関連 - 妊娠と避妊(ファミリープランなど)
- 出産と子育て
【ライフプランニング】
- 年齢によるタイムラインでの人生設計
- 収入と支出の見込み
- 自分と関わりのある家族の年齢と状況
- 自分のキャリアプラン
- 自分を取り巻く家族の今後の予想
※ライフイベントや家族の
ライフステージの変化の確認
高齢者理解と介護の現状
医療保険などの高齢者をめぐる課題
Ⅱ セルフマネージメント
【リスクコントロール】
- 消費者トラブルへのリスクヘッジ
・セキュリティ対策など
・消費市民社会の一員としての行動
・エシカル消費の理解 - 保険や預貯金等の暮らしのリスクヘッジ
・万が一への備えなど - 社会保障や税金・社会保険料などの知識
・給与明細の見方など - 災害への備え
・減災と防災 - 気候変動などの課題への対応
【ヘルスマネージメント】
ライフスタイル作り
〈生活的自立〉
- 生活習慣
- SNSとの付き合い方など
- 時間管理
- 睡眠管理
- 運動管理
- 生活管理
1.食生活
・自分に合った食習慣づくり
・食を取り巻く課題への気づきと
対応など
2.衣生活
・自分らしいワードローブ計画
・衣生活がもたらす課題への
気づきと対応など
3.住生活
・自分の住要求の整理と
住まいの選択
・住まいのリスク管理
・住まいをめぐる課題への気づきと
自分の暮らし方の見直しなど - 青年期の特徴と課題
・アイデンティティの認識
※自己分析/自己認識/自己受容/自己認識
・今の暮らし方や生き方の
見つめ直しなど
Ⅲ コミュニケーションスキル
〈関係的自立〉
- 家族関係
1.家族の定義と自分との関わり
2.家族とのコミュニケーション
3.これからの自分と家族
・親の役割、子どもの成長と課題
・高齢期の生活
・子育てや高齢期を支える仕組み - 人間関係
1.友人や知人
2.組織との関係
(部活や学校活動、その他の課外活動)
Ⅳ メンタルマネージメント
〈精神的自立〉
- セルフマネージメント
1.自分のあり方とその影響
2.行いやふるまいとその影響
3.他者との関わりと心の健康
4.社会との関わりと心の健康 - セルフコミュニケーション
1.自分にとってのwell-being
2.自分の周囲にとってのwell-being
Ⅴ プロジェクト
1.マイプロジェクト
(ホームプロジェクトから
個にフォーカスした
マイプロジェクトへ)
2.マイライフ
(自分の暮らしや人生に
照らし合わせた
プロジェクトへ)
3.コミュニティ
(自分とつながりのある
コミュニティへの関心へ)
4.地域社会
(自分の暮らす社会への関心へ)
授業や実習のアイデア
1 体験型実習のアイデア
従来家庭科の中で時間数をとっていた
実習は「調理」や「作品製作」を目的に
したものが多かったのですが、
生活体験が希薄な子ども達が多い
今の時代に合わせ体験型実習を取り入れ
5感を磨けるワークショップを
取り入れていくアイデアです。
従来の調理体験を目的とした
「調理実習」から
1コマでも出来る”食体験”を
主な目的とした
「食のワークショップ」
を取り入れるアイデア。
これは今運営に関わっている
「みらい家庭科ラボ」
という家庭科の先生のコミュニティで
新田美沙子先生から
具体的な実践内容も含めて
ご講演いただいた内容ですが、
よろしければ参考にして
いただければと思います。
2 時代に合わせた探究のアイデア
非婚化、晩婚化が進む時代に
家庭科で子育てを含む
保育分野を扱う場合
生徒達の社会に出てからの
ニーズを考えると
とても扱いが難しい分野と考えられます。
ここで紹介させていただきたいのが
保育分野に「探究的な取り組み」
を取り入れ
他教科との協力で進路指導にまで
つなげられた実践事例です。
この実践では生徒達が
ミニ授業を行うのですが
そのアウトプットの仕方にしかけがあり
〈演劇的手法〉〈映像作成〉などを
タスクとして取り入れる事で
グループ全員が何かの形で
必ず学習に関わり
コミュニケーションをとる必要がある
仕組み作りをされています。
このような実践を通して
ライフマネジメントに
必要な多様な力が自然と
生徒達に身に付くのではないかと
考えられます。
よろしければご覧ください。
https://youtube.com/watch?v=nI-sQzuEigk%3Frel%3D0
こちらは中学での
探究を取り入れた実践例です。
教育誌に取り上げていただいた
灘中時代の取り組みですが
よろしければご覧ください。
3.本からのアイデア
「課題研究メソッド」
探究的な時間を家庭科に取り入れるのは
ライフマネージメントについての
授業や実習を行う場合
不可欠になるかと思います。
では実際に何からどう手をつければいい?
という時に参考にして欲しい本です。
「The Self-Driven Child」
脳科学が教える
子どもにまかせる育て方
セルフマネージメントが出来るように
することが目的の一つでもある
ライフマネージメントでは
子ども達が主体的に学びに関わり
自分から行動して
くれるような環境づくりや
働きかけが必要になるかと思います。
少し古いですが
参考にして欲しい本です。
「リジェネレーション」
ライフマネジメントを扱う時
自分の暮らしから社会に目を向けると
必ず生徒達が向き合う事になるのが
気候危機などの問題では
ないかと思います。
その時にぜひ参考にして欲しい本です。
「ドローダウン」
「リジェネレーション」と同じ著者の書籍です。
地球温暖化を逆転させる100の方法という副題が
ついていて読み応えのある1冊です。
https://amzn.asia/d/dF9uizo
「問いのデザイン」
時代に合った授業や実習を展開する場合
「質のいい問い」というのがとても
大切なキーワードになるかと思います。
「問い」についていろいろなアイデアを
もらえる本として参考にして欲しい本です。
https://amzn.asia/d/6dPZE01
「進化思考」
探究学習を含め、個人でもグループでも
ライフマネジメントの学びに
不可欠になるPBL(課題解決型学習)の
解決策または対応策を考える時などに
取り入れて行きたいと
思うのが「進化思考」です。
ただ見つけた課題を解決するだけでなく
課題をテーマととらえ、
そのテーマを進化させるという発想で
よりクリエイティブな対処法や
何かのプロダクツやサービスを
創り出せる可能性を
広げるという意味で
様々に活用できる思考です。
ぜひ参考にして欲しい本です。
進化思考の活用法については
こちらの記事も参考に
していただければと思います。
https://note.com/embed/notes/n047d5d546966
この「進化思考」の本には
創造性教育についても
少し触れられています。
時代が子ども達に求める資質として
創造性はとても大切です。
そして学校の授業の中で
家庭科は生徒達が日々の暮らしという
自分事にしやすい状況で
その「創造性」を高める事が出来る
唯一の科目ではないかと思います。
創造性を育むという観点から
ライフマネジメントという視点で
どんなワークや体験の場が持てそうか
別の記事にまとめる事が
出来ればと考えています。
今回、時代の変化に合わせた
家庭科のアイデアということで
ライフマネジメントについて
まとめさせていただきました。
学校で非常勤講師として
家庭科を担当していた頃は
何か新しいことをする時は
生徒達や学校に
受け入れてもらえるのかと
不安が先立ちとても勇気が必要でした。
実際に始めても
軌道にのせるまでは
多大な時間も労力も必要で
本当に大変だった事を
思い出します。
今、現場で家庭科を受け持って
いらっしゃる 先生方は
日々いろいろな事に
立ち向かいながら
驚く程はやい時代の流れの中で
試行錯誤を繰り返しながら
頑張って いらっしゃる
のではないかと思います。
今回まとめさせていただいた内容は
現場を退いた立場で実践も伴わず
机上の空論でしかない
「アイデア」ですが
何かのお役に立てるなら
とてもうれしく思います。
変化のスピードが速く
見通しがたちにくい時代に
生きていく子ども達にとって
家庭科という科目が
非認知能力などを含めた
社会を「生きる力」を育むために
少しでも役に立つ科目に
なってくれればと
心から願っています。
〈終わり〉