中学生と考えた”子供にとって遊びとは”:マインドマップ活用事例

1 マインドマップの導入を決めた背景
「アイデア出すの難しい!
 本当に発想力ないわ…。」
生徒達がよく言っていた事です。

当時は、
家庭科の授業でも
知識の詰め込み中心から
グループごとに付せん等を使って
アイデアを出し合い、
課題に取り組ませる形式を
取り入れ始めた頃でした。

「きっと、
とんでもないアイデアが出てくるはず!」
若い彼らの柔軟な頭の中は
アイデアの宝庫と信じて
疑わなかったのですが、
現実はそうは行きませんでした。

公立から私学に勤務先を変えて
気が付いたのは、
中学受験を経験して
入学して来た生徒達の
知識レベルの高さと
”正解”に対するシビアな捉え方です。
テストなどをすると顕著で、
”正解”の明確な基準が必要となります。

逆に、「何でもいいよ」
「どんな事でもいいよ」という曖昧で
はっきりした正解のイメージの
つかめないものには抵抗というか
何を言っていいのか、
どう答えていいのか
戸惑いがあるようでした。

そんな頃、
発想のツールとして出会ったのが
”マインドマップ”です。

ノートの取り方の一つと
紹介されていますが、
私が魅力に感じたのは
そのアイデアの広がりやすさと
出しやすさでした。

自分で本を買って
やり方を理解しようとしたもの挫折…。
一度は保留していたのですが、
その後、
ワークショップ形式の実習が
盛んになりはじめ、
講座を受ける事にしました。
そこで職場など継続的に
指導が可能な場所で無料であれば、
マインドマップの描き方の
指導が可能な資格をとり、
授業の導入する事に決めました。

2 難航したテーマ選び
「マインドマップを
どんな目的で使いますか?」
これが私を一番悩ませた質問です。
最初の頃は授業の3時間分を
充てていたので、
マップの導入で
一番難しいパートはプロの先生に
お願いしていました。
その先生は
私がマップを習った恩師でもあります。

単純な私は、
とりあえず生徒達がマインドマップを
描く経験さえ出来れば
マップと相性がいいと思えた生徒が
使い続けてくれればいいと
思っていたのですが…。
マインドマップの体験が
主な目的であっても
マップ自体をどんな目的で使うかが
明確でなければ
とても指導がしにくいという事が
実際にやってみてよく分かりました。

とりあえず
自分なりのアイデアを出して
何かの形にする事を目的として
取り組みを始めました。

マインドマップの授業は
2学期に取り入れるつもりだったので、
その後の展開も考えて、
住居分野につなげるために
最初の年は”理想の部屋”
をテーマにしました。

部屋などに
あまりこだわりのない年代の
生徒達にとっては
アイデア自体が出しにくく
不評に終わりました。

次は少し広げて”理想の家”。
これも同じ理由で不発という感じ。
生徒達にとっては
マインドマップという
よくわからない事を説明され、
それを使うように指示され
あまり興味がない部屋や家についての事を
考えさせられたのだから
大変だったと思います。

この経験から生徒達にとっても
関心が高いテーマでなければと痛感し、
”遊び・ゲーム”を取り上げる事に
したのでした。

3 中学生とゲームの関係
「わあーー!」
休み時間の大きな歓声のそばには
いつもスマホ(ゲーム)があるようです。
ゲームの難しさはゲームが
子供達の友人関係も影響する事。

さらに、大人から見たら病気かもと思う程
のめり込む子もいます。
熱中するあまり生活リズムは乱れ、
宿題も含めた学習時間が
めちゃくちゃになり、
ひどい場合は昼夜逆転。

ゲームの世界でネットワークが出来ると
リアルとバーチャル
(オンラインゲームの場合)
の境がなくなっていく子も
いると聞きます。

生徒達自身にとっても
悩みの種となっている様子のゲームなら
「いろいろ考えが出てきて
ゲームとの付き合い方を
真剣に考えるきっかけと
なるかもしれない!」
ようやくしっくり来る
テーマと出会いました。

4 ”遊び”の中のゲーム
ただ、ここで問題になるのは
生徒全員がゲームをしている
わけではないという事です。
さらに家庭科と関連づけるとなると、
もう少し範囲を広げて”遊び”を
テーマにした方が
良さそうだと思いました。

さらに”遊び”がテーマなら、
家庭科の家族分野の
子供の成長と発達と
関連づけようと思い
「子供の成長と遊び」が
メインテーマとしました。

そして今回はテストの記述問題として
〈現代の子供達の成長や
発達を考える時
どんな遊びが大切なのか?
それはどうしてか?〉について
自分の考えをまとめてもらう事にしました。
マインドマップを利用して
一度自分の考えや浮かんで来た事を
紙に書き出しておいておけば、
それを活用して
記述問題に解答出来ると
思ったからです。

5 マインドマップの活用法
実際に
マインドマップは
情報の整理にとても役立ちます。
セミナーなどを受けた時の
メモ書きをマップにすると
後で見直した時に
気づきが多く助かります。

また、専門書を含む
本の情報整理や記憶法、
さらには
それをレポートや論文などに
まとめる時にも最適。
私は授業や実習の準備として
必ずマップを描くようにしています。

逆に自分が重宝しているからこそ、
当時、初めて体験する
生徒達の気持ちに寄り添えなくなり、
押し付けがましい説明になっていた事は
今でも申し訳なく思っています。

6 1度きりで止めた理由
結局、遊びをテーマにした
マインドマップの授業は
その1年限りで止める事にしました。

自分としてはゲームについて
フランクにどんな意見でも
受け入れる姿勢でいたと
思っていましたが、
家庭科の講師が
ゲームをテーマにした事で
生徒達にとっては
反抗心というかストレスを
感じているような
反応が多かったからです。

遊びについての関心も
個人差が大きく
思っていた程の
盛り上がりに欠けました。

結局、授業で扱うと
”やらされている”という気持ちが
強くなり
こちらがいいと思っても
ツールとしての
魅力を伝えるのは
痛感した年でした。

7 これからの時代の必須スキル?
その後は無難に
「防災」をテーマにしています。
住居分野での大切な内容です。
これならば、
個人差もそれほど大きくなく
生徒同士で情報交換もしやすいからです。

さらに
マインドマップはカラフルな色を使い
脳にフックをかけて
記憶を定着させていきます。
一度自分の家の防災対策について
紙一枚で俯瞰できる資料を作っておけば
それが何かの時に
役に立つと考えました。

このマインドマップは私の中では
AIと共存し、
個人のオリジナリティが
強く求められる時代には
必須のスキルではないか
とまで思っています。

ただ、
自分なりに使いこなせるように
なるまでには
それなりのコストを時間がかかりました。
また最初にどんな講師の方から
教えていただくかによっても
印象が違ってくるかもしれません。

でも時代の変化を感じるのは
最近ではクラスでマインドマップを
知っている子が増えて来た事です。
少しずつ認知されてきているようです。

興味のある方はぜひ
マインドマップの世界を
体験していただき
相性がよさそうと思ったら、
活用していただければと思います。

ちょっと古いですが入門書として
画像の「ザ・マインドマップ」は
おすすめの1冊です。
機会があれば目を通してみて下さい。

8 おまけ〈ネット依存〉
最後に先日、参加させていただいた
「うちの子は大丈夫?
ネット・ゲーム依存って?!」について
少しまとめさせてもらえればと思います。

11月末にネット依存外来を開設している
神戸大付属病院の専門外来を
担当されている曽良先生の
お話と質疑応答を
聞かせていただきました。

素人が考えているより依存状態の
判断は難しく
本人が依存症と認めないケースが多く
治療を始める前の段階の専門外来に
連れ出す事もなかなか大変な事。

ネット、特にゲームの世界では
独特の専門用語は常識のようなモノがあり、
その世界を理解しようと思ったら
自分で体験する事も必要そうだという事。

さらに依存状態では
韓国のような死亡例はないものの
長時間同じ姿勢でいる事で
エコノミー症候群になるリスクや
シューティングゲームなどが
心の与える影響が大きそうだという事。

お金の面でもガチャなどの
収益化が進んでいて(?)
のめり込むと大人でかなりの額を
つぎ込んでしまう人がいる事。

今後の流れとして
e-sportsの分野の広がりが考えられる事。
企業の出資や大学の取り組み事例なども
少しお話いただきました。
このイベントの時は
仕事に追われていて
間違った事を書いている
かもしれませんが
いろいろ考えさせられました。

今年ではずみがついた感じの
オンライン化はますます進み
ネットとリアルのボーダーが
曖昧になる中で
ゲームを含めた子供の遊びも
変化してくるのだろうと思います。
その変化が
子供達の成長と発達にどんな
影響を与えていくのか
大人はどうすればいいのか
しっかり見守っていく
必要があると痛感しました。
〈終わり〉

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