住める家・帰れる家のある幸せ

「自分が住んでいる家が、
突然住めなくなる時ってどんな時? 」

家庭科の住生活の分野の導入は、
こんな質問から始める時があります。

家がなくなったら困る事をイメージして、
そこから、家の役割を考えていくという
やり方です。

一般的には3つかと思われます。

・家計の破綻
住宅ローンの返済不能や家賃の滞納など
・自然災害
建物そのものがなくなるか住めなくなるなど
・失業
失職に伴う寮や社宅などからの強制退去
などです。

生徒達には、ピンと来ない問いのようで、
自然災害以外はなかなか出てきません。

でも、実は私は小6と子供を妊娠中に、
3つのうち2つを経験しています。

これを授業で言うと
“なんて悲惨な人生を送った先生! ”っていう
ムードが教室全体に漂うので、
あんまり言う事はありませんが…。

小6の時、父親が叔父の会社の連帯保証人になり、1年位で会社が倒産したため、多額の借金を背負うはめになりました。当時住んでいた持ち家を手放す事になったのですが、ご飯時などでも、ずかずかといろんな大人達が家の中を見て回りました。
こちらの都合など、まるでお構い無しです。

「みんなで一緒に死のうか…。」
父から言われ、
必死で反対した事を覚えています。

その時の何とも言えない失望感と不安感は、
今でも心の奥底に残っています。
親戚から
「お前の親父が自分の兄貴の会社がもうかったら、自分も金持ちになると欲を出して保証人になった罰だ」と言われ、
血縁からの援助もうけられず、
住み慣れた家を売り、
夜逃げ同然で引っ越す事になりました。

その事が人間不信につながり、
その後の人生で長い間苦しむ事になりました。
せめて、家に住み続ける事が出来ていたら、
かなり違っていたかもしれません。

二人目を妊娠中に経験したのは阪神大震災です。
当時住んでいたマンションの八階の部屋は全壊でした。
大きく歪んだ入り口から必要最低限のものは持ち出せたものの、数ヶ月間は仕事のある主人と、身重の私や二歳の息子は別々に暮らし、
根なし草のような生活を送った事を覚えています。

実家に世話になっていたものの、肩身の狭さと
お腹の子も含めた将来の見えない辛さで、
自分達家族だけの居場所である“家”がない
しんどさが身にしみ、
眠れない夜を過ごしたものです。

今日、ネット情報で「住宅ローンの返済が滞る家庭が増えるかもしれない」と読み、
当時の事を思いだし暗い気持ちになりました。

家に住めなくなるかもしれない恐怖と
実際に住む家を失くしてしまった辛さを、
子供の立場と親の立場の両方で
体験しているからです。

また、
住宅ローンの仕組みをよく理解していないままの人は、後になり大変な思いをするだろうと
想像出来るからです。

それは、一定期間後に金利の引き上げがある制度やローンの未払いなどで優遇措置がはずれた場合などは、それまで払っていたローンの金額がはねあがる可能性があるから。

この状況で世帯主の収入が思いがけず下がり、
また、
サブで支えていた収入が入らなくなり、
住宅ローンや家賃にしわよせが行くことは
十分に考えられます。

でも、住宅ローンや賃貸契約をする時は、
そんな悪いイメージは持たないのが普通です。

だから、こんな思ってもいなかった状況が起こるとなすすべがなく、ただ不安に感じ、特別措置などがある事を願うのかもしれません。

でもね、実は一番敏感にその不安や戸惑いを感じとるのは、親よりも子供ではないかと思うんです。
だからこそ、やはり、今、いろいろな所で必要性が叫ばれている補償の事は早急に何とか出来ないかと心から思います。

子供達が住む家を失くす不安を感じる事は
心理的にものすごく不安定になり、
後々までトラウマとして残ります。
これは私自身の経験からも確かな事です。

だから、
もし住居ローンや家賃など住居に関わる事で
少しでも不安がある人は早めに相談するか、
何かうてる手を打って欲しいと心から願います。

自分達が帰れる家、住める家があるだけで暮らして行けます。
それは、普段は感じる事が少ないかもしれないけれど、とても幸せな事です。

すごもり生活の長期化は、本当に辛い日々かもしれませんが、風雨から暮らしを守ってくれる家、自分達だけの生活が出来る家に住む事が出来ているだけで、本当はとても恵まれた事だと思います。

ここで書いた内容は、私の理解不足や
すでに何かの対策がとられているのに
私が知らないだけという部分も
あるかもしれません。

その場合はお許しください。
この内容が少しでも、どなたかの
お役に立てれば幸いです。

《終わり》

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