1. はじめに
先日、みらい家庭科ラボで、大澤裕子氏(『難病の子のために親ができること』著者、Japan居場所作りプロジェクト代表)をゲストに招いた「おしゃべり家庭室」の特別対話を行い、動画にアップしました。
今回のテーマは、実技指導も伴う「家庭科」での特別な配慮が必要な病気やしょうがいをお持ちのお子さん達への接し方やケアとしました。大澤さんと、みらい家庭科ラボのスタッフ二人との対話の時間は40分に及びましたが、それだけ充実した内容になったと思います。
その時の動画はこちらです。
この記事は、特別な配慮が必要な児童・生徒への接し方とケア、特に家庭科教育における配慮とサポートについて、保護者の視点から得られた主要なテーマと先生方にとって大切だと思われる事実・アイデアをまとめたものです。
大澤氏は、心臓病を持つ娘さんの成長を見守っていらした経験から、地域社会や学校生活での困難を乗り越える中で、誰も一人ぼっちにならない温かい社会の実現を目指して活動されています。どうぞご覧下さい。
以下、NotebookLMで作成した動画の内容をテキストにしたものと、動画を元にした「音声解説」及び「スライド資料」での解説をまとめています。
2. 主なテーマと動画の内容
2.1. 保護者と教師間の連携の重要性
- 教師側の課題認識の不足: 現場の教師は「どうしたらどう対応してあげたらいいか気持ちはあるけれど、分からなくてちょっとこう固くなる(緊張する)」と、特別な配慮が必要な生徒への対応に戸惑いを感じている。
- 保護者側の伝えきれない思い: 保護者は「思いを伝えたいしこうして欲しいってことがあっても、何となく身構えられる」と、学校側に遠慮し、要望を伝えることを躊躇する傾向がある。本当は「山のようにある」伝えたいことに対し、「お忙しいと思いますしっていう遠慮も働きますし、あんまりすぎるとね、何々さんの親子さんは要望ばっかりだよねっていう風になってしまうんじゃないか」という懸念を抱えている。
- スムーズな連携の必要性: 大澤氏のような保護者が積極的に情報を共有することで、「教師側としてはやっぱり、どうすればいいか分からないこともあるんですよね」という課題が解消され、「現場の先生ってすごく楽になるんじゃないかな」と期待されている。
- 個別面談の機会確保: 体育の授業に限らず、家庭科などの実技科目においても、保護者から要望しない限り、個別の面談が設定されないケースがある。保護者としては、担当の先生だけでなく、実技科目の先生にも伝えたい情報が多く存在するため、学校側からの積極的な面談設定が望ましい。
2.2. 家庭科教育における具体的な課題と配慮の必要性
- 授業への参加のしづらさ:身体的制約: 長時間同じ姿勢での作業や立ったままの実習は、体力の問題で困難を伴う場合がある。大澤氏の娘さんのようにペースメーカーを装着している場合、IH調理器の使用を避ける必要があるなど、個別の制約が存在する。
- 学力・スキル習得の遅れ: 長期入院などの影響で、文字の習得に時間がかかったり、靴ひもを結ぶなどの基本的な生活スキルが未習得のまま学年が上がったりするケースがある。「小学校で習得してて当たり前っていう前提で動いているようなとこがあります」という現状に対し、そうではない生徒もいることを教師側が認識する必要がある。
- 指示の理解の困難さ: 神経発達症などの特性を持つ生徒は、視覚からの情報が受け取りにくい、全体への指示と個別指示の区別が難しいなど、「指示の曖昧さに混乱する」場合がある。教師は「全体に明確に指示をするっていうことと違うけど、今回は少し別のやり方で、あなたの場合はやるけどでもあの大丈夫だよっていうようなその安心感」を与えるような指示の出し方を心がける必要がある。「口頭で聴覚優位っていうか、口頭で指示というのが、理解が難しいという生徒さんって増えてきてる」ため、見て分かる、聞いて分かる、身体性で一緒にやって分かるなど、多様な伝達方法を検討することが重要。
- 授業前の配慮:精神的・感情的な配慮: 特に中学生・高校生になると、「周りからどう見られてるか」を気にするため、サポートの仕方が重要となる。「授業が始まる前に本人とちょっとこう話しておく」など、事前のコミュニケーションが鍵となる。
- 事前の情報共有・確認: 保護者としては、生徒が「傷ついて欲しくない」という思いが強く、「家庭科的な学びというのは、(主要科目ではないなどの理由で)一旦横に置かれていることっていうすごく多い」ため、生徒の現状を教師が把握し、「全体として今日はこういうことをやるんだけども、その中で何か気になることとか心配なことあるっていうのをちょっと確認をしておく」ことが望ましい。
- 保護者との連携: まだ自分で気持ちを伝えられない生徒の場合、「親御さんに事前にそういったところをちょっと確認をできていけたら、子どもたちに安心をして授業をうけさせることができる」と保護者は感じている。
- 評価における配慮:過程と取り組みの重視: 他の生徒と同じスタートラインに立てない可能性があるため、「課題などに対する取り組みを、子どもが頑張ってやっていればそれに対しての評価というか、声かけだったりというのをしてあげてもらいたい」と保護者は願っている。
- ネガティブな経験の回避: 生徒自身が「自分としても成果物が同じようにいってないっていうのは認識している」ため、評価によって「何かを作り上げるっていうことが億劫にならないようにしてあげたい」という保護者の思いがある。
- ユニバーサルデザインの視点: 「ユニバーサルデザインに近いこう教育」を目指し、長時間の調理実習の場合、担当分けや休憩時間の確保など、柔軟な対応が求められる。
2.3. 生徒の心を支え、学びへの意欲を育む関わり方
- 信頼関係の構築: 生徒が「できない」「参加できない」と感じる背景には、身体的な理由だけでなく、「精神的なこう理由として後ろ向きになっている場合」もある。「信頼関係がうまく構築できない時に、よりこういったことが多くなるんじゃないかな」と感じている。
- 教師のポジティブな言葉がけ: 生徒が前向きに取り組めるのは、「先生との関係が結構良かった」時である。教師が「娘のことをとても好意的に思ってくださっている」「娘の頑張りとかちょっとした変化に対してこうちゃんと吸い上げてくださる」と保護者は感じている。
- フィードバックの質: 「ポジティブワードでフィードバックがあるのかネガティブワードでフィードバックがあるのかっていうところでもやっぱり全然違う」。教師の言葉は「子供にとっては本当に大きなもの」である。
- 個別の努力の承認: 「お 子 さん の いいところだったり、そういっ た ところをちょっと言語化し て こう 伝えていただい たり、確に、 この 部分は、ちょっと難しいというところがあるとは思うんですよ。「頑張ってたね」と「見てるよ」 とか、 その言葉がすごく 子供 の 支えになることってあるんです よ ね」。生徒の「ちょっとしたところをね、ちゃんと見ててくれる」ことが、大きな支えとなる。
- 言葉がけのバランス:生徒の頑張りを「全体の前で伝えたい時と逆にその子にだけそっと伝えたい時と」のバランスも重要である。
2.4. インクルーシブな家庭科教育の実現
- 家庭科の可能性: 家庭科は「生きる力」を育む科目であり、「算数とか他の強化と違ってその時の学びである程度その完結できるものでもある」ため、「得意不得意もはっきり出る強化でもある」がゆえに、「みんな違ってみんないい」「違いがあっても一緒に学べる強化」として、「ある意味のそのインクルーシブな事業を実現しやすい強化でもある」と認識されている。
- 助け合いの経験の価値: 「包丁で切った経験のない子」と「意外な子がすごく上手だったり」するケースや、「ミシンの糸を通すのが苦手」な子が「すごい得意な子がいて助けてもらった」経験など、家庭科の授業では「助ける助けられるみたいな経験」が自然に生まれる。これは「新しい発見をしたりとか自分はこれちょっと苦手だなっていうのを見つけたりっていう」貴重な体験である。
- 社会の縮図としての家庭科:これらの経験を通じて、「社会の縮図としてというか、社会の仕組みとして私たち支え合ってるよねっていうのを感じるためのすごく素敵な機会に繋がっている教科でもある」と大澤氏は語る
- 「みんな◯」の肯定: 「病気があっても、様々みんなそれぞれにあると思う」「そのままでも◯」「まずは、今のままでみんな ◯」という考え方を教師が持つことが重要。そして、「◯同士が集まっていった時、くっついた時に、さらに何か大きい◯になる」という共生のイメージを教師が持つことが期待される。
- 評価と全体主義からの脱却: 教師は評価や全体主義に陥りがちだが、「改めてなんか1人1人をなんか大切にしてなんでインクルーシブって言わなくってもなんかそれが当たり前のなんか学校になるといいなって改めて」という願いが込められている。
3. まとめと提言
今回の対談を通じて、特別な配慮が必要な児童・生徒が家庭科の授業を心から楽しみ、学びを深めるためには、教師と保護者、そして生徒自身の間の丁寧なコミュニケーションと深い理解が不可欠であることが明確になりました。
- 教師へのエール: 大澤氏は家庭科の先生方に対し、「心を寄せていただけるっていうことが本当に嬉しい」と感謝の意を表明し、家庭科が「喜びにつながるもの」「生き抜きになったりとかワクワクするもの」「生きる喜びに繋がっていく」教科であるというメッセージを送っている。
- 学校の役割: 学校は「楽しいもので行きたくなるところであって欲しい」と強く願われている。
- 保護者との協働: 保護者側も「ちょっと遠慮して言えないなと思う部分」があるものの、「心を寄せてくださる先生がいらっしゃるから」「ここをはっていう部分があればやっぱりそこはねしっかりあのなんて言うのかなお伝えしていくでそれを一緒にお願いするだけするじゃなくって一緒になって考える」という姿勢で学校と協力していく意向を示している。
「誰一人取り残さない家庭科教室」を実現するためには、教師が個々の生徒の多様な背景やニーズを理解し、きめ細やかな配慮と温かい言葉がけを通じて、生徒たちが安心して学び、互いに助け合う喜びを感じられる学習環境を創り出すことが求められます。家庭科は、その多様性を認め、活かし、社会の縮図として「助け合う」経験を育む上で、非常に大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。
4. 関連情報
大澤裕子氏著書:『難病の子のために親ができること』
https://amzn.asia/d/6VNxGMG
JAジャパン居場所作りプロジェクト
https://jidp.net/
親子に寄り添う連携支援プロジェクト
https://jidp.net/oyakopj/
5 NotebookLMでの動画のまとめ
【音声解説】
家庭科で育む:見えない壁を越え「みんな〇」で学び合うインクルーシブ教育
https://drive.google.com/file/d/1dJQnHkjmpF4PXs6Iw10eidufjF5oN-tD/view?usp=sharing
【スライド動画解説】
インクルーシブな教育:家庭科におけるギャップを埋める
https://drive.google.com/file/d/1w_r12r0PB86BCiLpIWayaSg5vQJSSzit/view?usp=sharing
(終わり)