授業中の「笑い」、どう向き合っていますか?
家庭科の授業で調理実習中、生徒の何気ない一言にクラスが笑いに包まれる。そんな瞬間、私たち教師は複雑な気持ちになることがあります。その笑いが誰かを傷つけていないか、授業の雰囲気を壊していないか――。

「笑い」は教室に活気をもたらす一方で、使い方を間違えると誰かの心を深く傷つけてしまう両刃の剣でもあります。では、どうすれば「人を傷つけない笑い」を授業に取り入れることができるのでしょうか。
「寺子屋せりっち」で出会った新しい視点
先日、「寺子屋せりっち」というリアルな学びの場で開催された特別なワークショップに参加しました。テーマは「落語から学ぶ人を傷つけない笑いについて」。講師は「笑ってみ亭じゅげむ」さんで、落語の小噺を題材にした実践的なグループワークが行われました。
このワークショップでは、2つの小噺の展開を予想し、それを学校生活の具体的な事例に置き換えて考えるという手法が取られました。参加者は現役の先生方が中心で、「スナック キャンディ」という温かい雰囲気の中、芹澤先生(せりっち)のお気遣いのもと、活発な議論が展開されました。
落語思考が教えてくれた「笑い」の極意
ワークショップで共有された「人を傷つけない笑い」のポイントは、教育現場ですぐに活用できる実践的なものばかりでした。
排除ではなく、面白さを見つける視点
何かトラブルが起きた時、問題を排除するのではなく「どうすれば面白くできるか」を考える。この発想の転換は、授業中の予期せぬ出来事を学習の機会に変える力を持っています。

「ズレ」を意識したコミュニケーション
会話のズレや常識のズレを笑いに変える技術。家庭科の授業では、生徒の予想外の発言や行動を、クラス全体で共有できる学びの瞬間に変換することができるのではないかと思います。
言葉選びの重要性
「誰もいやな思いをしない言葉」「もらって気持ちのいい言葉」を意識する。これは家庭科で扱う「家族関係」や「コミュニケーション」の単元にも直結する視点かとおもいます。
その他の実践的ヒント
- 笑いの交換
- 否定しない言葉選び
- 笑いの輪郭を意識する
- 一人ひとりの個性(パーツ)を活かす
落語思考が拓く教育の可能性
「落語思考」という考え方は、単に授業中の笑いを扱うだけでなく、教師として、そして一人の人間として日常生活全般に活用できる思考法であることが分かりました。
全体ディスカッションでは、「いい笑い」「コンプライアンス」「常識の境界」などについて深い議論が行われ、参加者それぞれが自分の教育実践を振り返る貴重な機会となりました。
最後に、ワークショップの内容をグラフィックレコーディングでまとめてくださった先生から、視覚的で分かりやすい整理をしていただき、学びの振り返りも充実したものになりました。
科目を越えた学びの価値
家庭科は「一人一校」の配置が多く、同じ科目の先生との情報交換が難しい現状があります。しかし、今回のワークショップで他教科や他校種の先生方と交流することで、もし、この場に家庭科の先生方が参加されていたら、きっと新しい視点や気づきを得ることが出来るに違いないと感じました。
AIの時代だからこそ、人との繋がりを
生成AIの進化が止まらない現在、多様な先生方との交流は、家庭科教師にとって何よりも貴重な財産となるのではないかと思います。技術が発達すればするほど、人と人との温かい繋がりから生まれる「笑い」や「学び」の価値は高まっていくのではないでしょうか。
よろしければ、当日の様子を収めたショート動画も合わせてご覧ください。
暮らしに根差す家庭科だからこそ、授業や実習中の「笑い」も独特のものがあるのかもしれません。授業の中の「笑い」を味方につけることが出来れば、より豊かな学習環境が出来るのではないかと、今回のワークショップへの参加で感じました。
最後に今回、お世話になりましたお二人の紹介をさせていただきます。
笑ってみ亭じゅげむさん:京都府出身の笑い教育家、一般社団法人笑ってMe代表 CitySsdmekuru。落語を使ったお笑いを通して、子どもたちの個性を引き出し、表現力を育む活動で全国の小・中学校などで出張授業を行っている 〈ヒューマン〉 笑い教育家 笑ってみ亭じゅげむさん方です。
芹澤和彦先生(教育クリエイター)
こちらは、先生のインスタグラムの画像です。

芹澤先生のインスタグラムのアカウントはこちらです。
https://www.instagram.com/serizawa0714/
芹澤先生はnoteやXなどでも発信されていらっしゃっいます。科目は英語がメインのようですが、
家庭科ともなじみの深い「探究」や「アントレプレナーシップ教育」にも造詣が深く、マルチの活躍されている先生です。キャリアの講演などにも登壇されていて、本も出版されています。「中学校・高等学校 4技能5領域の英語言語活動アイデア 」
https://amzn.asia/d/hW6cb9w
いろいろな活動をされいる方々だからこそ、家庭科の先生方にも、ぜひ、つながっていただければと思います。(終わり)